DIARY:私のローマ / 長い長い夢 その11

桜を憶う

 

 

 

ある春の日に、ローマから地下鉄で20分ほどのエウル地区 EUR で開催された、在ローマ日本人の方々によるお花見にお邪魔しました。

お声をかけてくださったのは、個展準備でお世話になった Mika さん。
展示のことを ご自身の blog でもご紹介くださり感謝です。

 

 

エウル湖のほとりに咲くソメイヨシノ、濃い色の花は恐らくセイヨウハナズオウ。

 

 

エウル地区は1940年代のムッソリーニ政権時代に開発された新都市で、人工湖のエウル湖を周回する中央公園の遊歩道にはソメイヨシノが植樹され、「日本の散歩道 Passeggiata del Giappone 」と呼ばれています。

 

東京のイタリア文化会館の記事によれば、1959年(ローマオリンピック前年)当時の日本国首相 岸信介が公式訪問の際に2本のソメイヨシノを持参し植樹、さらに東京都から約2千本の桜が寄贈され、現在ではイタリアと日本の友好関係のシンボルとなっているそう。

 

今春(2019年)は現首相で、岸元首相の孫でもある安倍首相がローマを訪問し、プラザ・ホテルで日本食のレセプションを開催。イタリアにおける日本文化への関心の高さが感じられます。

 

 

私にとってエウル地区の桜は、実に24年ぶり。

当時の友人達が「Mariをローマの東京に連れて行く」と誘ってくれたのです。
私の実家は東京だったのでなんだか嬉しくて、友人の車 Fiat Panda の中で、ピチカート・ファイブの『東京は夜の七時』を大音響で流し、歌いながらエウルに向かったことを思い出しました。

 

2019年春、ローマのこの日のお花見は、日本人の数グループ、百名近くの方が集われたそう。
ソメイヨシノの木陰に陣取り、お手製のお料理を持ち寄って、心からお花見を楽しまれているようでした。

私自身は鎌倉のスタジオ界隈が山桜など身近で、普段は特別に花見をしないので、ローマのお花見に圧倒されました。

 

 

エウル地区のお花見で盛り上がる日本の方々のお姿に、私はふと、遠藤周作の「沈黙」のお月見の描写を重ねました。
布教活動の末に捕らえられたイエズス会の司祭ロドリコは、月夜にゲッセマネのキリストのように苦悩します。
ロドリコの牢屋の外は、神ではなく満月を愛で、芋や豆、団子を囲む日本人たち。。。

 

日本人は桜(自然)が、ただ綺麗で嬉しいのではなく、季節や月日のめぐりに人生の場面を重ねあわせ、感慨にひたるのでしょう。。。

 

 

 

 

ソーシャルメディアが盛んになった現代でも、花見というリアルは、ローマの日本人の拠り所の一面でした。

書物や音楽、アートにも、同じような(時に時空を超越した)感覚、心の拠り所、共感があります。

特にアートは、時代の感覚より早く創作されたり、作家がマイノリティだったり、疎外感や憂鬱とともに、まっすぐに歩む力、光があります。

ぜひ、ローマの日本人の方々も、美術館やギャラリーにいらしてみてください。

 

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