DIARY:私のローマ / オレンジの樹と、鐘の音 その8

クリスマス・イヴのアート散歩&ファルネーゼ宮殿

 


 

 

 

 

クリスマス・イヴはローマ現代アート美術館へ行きました。
私の母校の修道院がある9月20日通り Via Venti Settembre に近い地区です。

 

美術館に向かう途中、クイリナーレの丘・クイリナーレ通り Via del Quirinale に面した、サンタンドレア・アル・クイリナーレ教会 Chiesa di Sant’Andrea al Quirinale に寄りました。

 

 

 

 

 

イエズス会のためにベルニーニが設計した教会で、ベルニーニの最高傑作であり、自信作と言われている作品です。

二本のイオニア式のふっくらした円柱がせり出すファサード、敷地の狭さからの、横長の楕円のチャペルという個性的な空間。金箔を押した装飾や赤色花崗岩が輝いています。

 

 

 

クリスマス・イヴの朝、チャペルには私一人きりで、プレゼピオを見せていただいたり、ゆっくりと過ごしました。

 

 

 

9月20日通りのサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会  Chiesa di Santa Maria della Vittoria  にも寄りました。
こちらもベルニーニの作品が拝観できる教会です。

ここは思い出深く、1994年に私が初めてローマに着いた翌朝に、地図も持たずに、たまたま最初に入った教会でした。
「聖テレジアの法悦」の美しさは以前から天使の研究で知っていましたが、まさか、それが偶然に入った教会にあるとは知らず。

ローマに恋に落ちた、ローマに導かれた、そんな気持ちになった思い出の教会です。

 

 

 

 

この教会は以前はいつ拝観しても静かでした。

ある小説や映画がきかっけで有名になって、この日の朝は
チャペルは「聖テレジアの法悦」目当ての観光客で混雑していました。
体格の良い男性達が興奮気味に大きなカメラを手に動きまわって、ベルニーニの最高傑作のサンタンドレア・アル・クイリナーレ教会の静寂とは対照的でした。

 

チャペルの端の椅子に腰掛け、私は祈り、一枚だけiPadで思い出のチャペルを撮影しました。
長い療養を経て、イヴの朝に、ここへ再訪できた事に感謝して。

 

すると白人で金髪の高齢の男性が私に近づき英語で怒鳴りつけました。
シャッター音を消せ、というのです。ご自身は祭壇前で仁王立ちです。
他に20人ほどの白人男性が賑やかに動きまわり、激しく連写する音よりも控えめな存在の私に、アジア人、または女性だからでしょうか。
迷惑をかけたことは申し訳ないので、「失礼しました」と怯えて答えることしかできませんでした。

 

私は教会に入る時の気持ちとして、まず、必ず献金をします。
またはポストカードや教会のショップでお金を使って拝観させていただく際の感謝の気持ちを示すようにしています。
また、チャペル内は動きまわらず、御ミサの邪魔もしません。

悲しくて、心ざわめきながら教会を出て、通りを歩き始めました。。。

 

 

ちょっと、道の先の母校のチャペルにも寄りましょう、、、

 

 

 

 

9月20日通りに面して、かつて母校の修道院だった建物があり、通りを少し入った所には、現在もチャペルがあります。
前庭のオレンジの樹の実が輝いています。

 

ここは母校の創立者、聖ラファエラ・マリアが過ごされた教会で、私は逃げこむようにチャペルに入りました。
チャペルに入る時、扉に張り紙があって、列聖されたばかりの聖ラファエラ・マリアを祝福しに教皇様が教会にいらっしゃる、と告知が書いてありました。

聖ラファエラ・マリアは理不尽なことがあっても、心静かに祈りを捧げられた方です。

 

チャペルにはシスターがお一人祈られていて、そのお姿の力強さに導かれ、しばらく座っていたら、心のざわめきがなくなりました。
あの白人の男性は疲れていたのかもしれない、ベルニーニの作品を愛しているのだろう、と。
イヴの朝に、このチャペルで過ごせたことにも感謝です。

 

 


 

 

 

かつて母校の修道院だった建物の先には、ミケランジェロ設計の城門、ピア門 Porta Pia があります。

 

 

 

 

この門の向こうの城壁の先に、ローマ現代アート美術館 MACRO があるようなのです。

 

 

しばらく歩くと、看板が見えました!

 

 

 

 

ローマ現代アート美術館 MACROに到着。

開館前で人が並んでいましたが、なんと、さっき、私を怒鳴りつけた男性がいるではないですか!!!

彼もすぐに私に気づき、私が Hellow again ! と声をかけると、少し照れくさそうにしていました。
(または、あのシャッター女だ!の苦笑?)
夫人と思われる女性も気まずそうな笑顔で挨拶していました。

 

 

彼は建築家?教授?アーティスト? 文化人プンプンの佇まい、ウディ・アレンの映画の登場人物のようなカップルでした。

 

 

MACRO の建物、エントランスも素敵で心地よいです。
2010年にフランスのオディール・デック Odile Decq によって設計、新改築されたそうです。
ここに来られてよかった!大好きになりました。

 

 

 

 

 

当時開催中だった、インド出身のイギリス在住の彫刻家、アニッシュ・カプーア Anish Kapoor の企画展を楽しみにしていました。(鑑賞は2016年12月。)

 

 

 

グロテスクなようで、実際の作品からは真っ直ぐで透明な強いエネルギーを感じました。

アートっていいな! 感動!

 

 

 

 

鑑賞中、例の白人男性夫妻と何度もすれ違いましたが、お互い笑顔で会釈しました。

 

別の展示室のレサ・ウィルソン Letha Wilson の作品が興味深かったです。
厚手のプリント紙にコンクリート(?)が流されていて表面的な世界と重厚感、唸りました。

 

 

 

 

また別の展示室では、リア・ドゥレイ Lia Drei の回顧展をやっていました。

 

 

 

 

 

MACROにはカフェテリアもあって、また、1階のブックショップが書籍もグッズも充実していました。
欲しい本がたくさんあって悩み、諦めました。

エコ用の水筒とフクロウの包装紙、手作り石けん(ヴァーベナと5月の薔薇の香り)を購入。

 

 

 

 

ローマ現代アート美術館 MACRO、期待以上に素晴らしかったです。
母校の修道院とも近く、お気に入りのコースに加わりました。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

ファルネーゼ宮殿 Palazzo Farnese を見学した日のことも、美しいクリスマス風景と共に少し書いておきます。

 

友人のKと、Edicolanteさん と待ち合わせ、ファルネーゼ宮殿 の見学を予約して出かけました。

 

 

ファルネーゼ宮殿はルネサンス期の建築で、ローマ劫掠後にミケランジェロが設計に携わりました。

現在はフランス大使館でフランスの管轄ですから、見学は予約が必要で、指定の時間に入場口前に集合し、入国審査のような厳格なセキュリティ・チェックもありました。

 

 

ミケランジェロの手がによるコーニス(軒の蛇腹の突起)のリズム美しいファサード。

 

 

少し早く着いたので、広場に面したカフェで一息。
フランス大使館やカンポ・フィオーリという市場も隣接していて美味しい&洒落たお店が多い界隈です。
広場近くの カッフェ・ペルー Caffè Perù の雰囲気が好きで若い頃によく行きました。

 

 

 

 

 

友人たちと合流して宮殿内へ。

撮影不可ですが、見学したかった中庭、階段、
アンニーバレ・カラッチ Annibale Carracciによる
天井(フレスコ)画「バッカスとアリアドネの勝利」の見事な筆致、古代彫刻のコレクションの数々を鑑賞でき、大変充実したひとときでした。

 

カラッチの天井画は人体表現や空間構成は、ミケランジェロの影響を強く感じますが、画家らしく、さらに練った構成や粘質な描写が冴え、優れています。

ファルネーゼ宮殿のwebサイトで作品風景が見られます → こちら

 

この宮殿の建材は、古代遺跡のコロッセオやカラカラ浴場の石材を再利用したものなので、トラヴァーチン石や花崗岩のあしらいを観ることができ、個人的に興味深かったです、再訪したい!

 

 

 

 

 

 

いつもは広場からの宮殿を拝むだけでしたが、実際に内部を見学し、この宮殿がその後の多くの建築の手本になった、ということが理解できました。

 

すっかり日も暮れ、ファルネーゼ宮殿前広場も幻想的な風景に。

 

 

 

ローマのクリスマスの風物詩、ナヴォーナ広場 Piazza Navona では、回転木馬に乗るこどもさんたちの歓喜の声が響いていました。

 

 

 

 

 

Buon Natale a Tutti !