ブラマンテの回廊で朝食、ローマの宮殿や遺跡で花のスケッチ
旅の七日目。
今朝はまず、ブラマンテが設計した素敵な回廊、
キオストロ・デル・ブラマンテ Chiostro del Bramante で朝食を。

古の空色を写すキオストロ・デル・ブラマンテの外壁の窓。
ナヴォーナ広場近くの
サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会
Chiesa di Santa Maria della Pace は、1482年に建立。
当時のローマ教皇が戦争終結を祈願し、
平和が訪れた記念と御礼に聖母マリアに捧げられた教会なのだそうです。
キオストロ・デル・ブラマンテは、この教会にある回廊で、
ドナド・ブラマンテ Donato Bramante によって1504年頃に増築されました。
ブラマンテはヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂の初期の主任建築家でした。

サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会。パーチェ=平和。
教会正面、列柱のあるポーチは時代を経て17世紀に増築。
このポーチの趣向は、ローマの ジャニコロの丘にある
サン・ピエトロ・イン・モントリオ教会 Chiesa di San Pietro in Montorio の、
ブラマンテ設計の美しい礼拝堂 テンピエット Tempietto(1502年頃)への
オマージュのようにも感じます。

ブラマンテのテンピエット。サン・ピエトロ・イン・モントリオ教会のwebサイトより画像拝借。
サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会は、
拝観曜日と時間が限られていることで知られますが、
ご縁あってか、何度伺っても有りがたいことに拝観できています。
画家 ラファエッロ Raffaello Sanzio が描いた、
美しいフレスコ画 「巫女と天使 Sibille e angeli (1514-1515年頃)」があります。

Cappella Chigi Raffaello Sanzio “Sibille e angeli”
巫女や天使たちが本当に座っているような構図です。
当時、完成したばかりの(おそらく最先端の表現であった)
ミケランジェロ作 システィーナ礼拝堂の天井画 の彫刻的な構成を、
ラファエッロは絵画的に咀嚼し、さらに洗練させて、
まるでフーガが聴こえるような空間に仕上げていると感じます。

ブラマンテによる回廊 Chiostro del Bramante
さて、キオストロ(回廊) Chiostro del Bramante にやってきました。
ブラマンテらしい凛とした空間です。
現在ではサンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会の一部が
美術館 “キオストロ・デル・ブラマンテ” となっており、
さらに、回廊にはカフェとビストロ と ブックショップ があります。
今朝はここのカフェテリアで軽い朝食をいただきます。

2階のカフェへ向かう古階段。

回廊の作りを上手く利用したカフェテリア。

お砂糖を入れてから慌てて撮影、カップッチーノと焼きたてのコルネット。
カフェテリアのスタッフに、
「ここでスケッチしても良いですか?」と聞いてみたら
「Certo ! = もちろん!」と言って、静かに見守ってくださいました。
回廊を望めるロフトやバルコニーが見えますね。
キオストロ・デル・ブラマンテにも 宿泊施設 があるんですよ。
お部屋は素敵だけれど、残念ながら私の好みではありません。
宿として改装される前にはどんな空間だったのか、
お住まいだった方の暮らしぶりなど想いロマンを感じています。。。

界隈の古い家。ジャスミンが絡むバルコニーが素敵、左の家も相当古くて素敵。
サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会がある界隈は、
ナヴォーナ広場に近く、古くから観光地化されていて
良い意味での風情や文化的な厚みがあるように感じます。
街並みも好き。

古の空色が写る窓。
教会の左手の路地を入って、
蔦が絡む佇まいで有名な ホテル・ラファエル Hotel Raphael の通りへ。

ホテル・ラファエルは一応、五つ星。屋上テラスは観光的におすすめ。

ホテル・ラファエルに並ぶ、サンタ・マリア・デラニマ教会の窓。ローマでも好きな窓のひとつ。

界隈の古書店のディスプレイ。ここのディスプレイは時々変わって素敵です。
続いて、ナヴォーナ広場北の
ローマ国立博物館、アルテンプス宮 Palazzo Altemps へ行きました。
前回のスケッチの続きです。

アルテンプス宮(ローマ国立博物館)
2階のロッジアにレモンの大きな鉢植えがあり、
レモンの花が咲いていたので記念に描きました。
簡単なスケッチですが、花の香りなど心に刻みました。

葡萄のフレスコ画が美しい2階のロッジア。

アルテンプス宮のロッジアにて。レモンの花。

レモンの花・アルテンプス宮にて:画 望月麻里 (C) Mari Mochizuki

アルテンプス宮から望む、サン・サルバトーレ・イン・ラウロ教会のクーポラ、手前の魅力的な小さなお屋敷はフィアメッタの家。住みたい。

アルテンプス宮の一階には紅白の椿の鉢がありました。
椿の花を1時間ほどスケッチしていたら、
急に咳き込んでしまい、顔や目がヒリヒリ。。。
おそらく、この季節に椿につく毛虫除けの殺虫剤が原因?
まさかのアルテンプス宮で洗顔&うがいをし(笑)、
スケッチを切り上げて近所のバールで、ホットミルクを注文しました。

椿のつぼみ・アルテンプス宮にて :画 望月麻里 (C) Mari Mochizuki

アルテンプス宮の椿はカメリア・ジャポニカ”Rosedale’s Beauty”という品種。青く見えるのが殺虫剤?

アルテンプス宮 近くのサン・アゴスティーノ教会。ラファエッロやカラヴァッジョの作品あり。右手の建物も教会。
体調を整え、ナヴォーナ広場へ。
ブラジル大使館のギャラリー、Boris Kossoy氏の展覧会を鑑賞。
ナヴォーナ広場に面した、
ローマ博物館 ブラスキ宮殿 Palazzo Braschi /Museo di Roma へ。
ここの宮殿の階段は、赤色花崗岩がピリリと効いた趣向です。素敵。

ブラスキ宮殿(1791年)の美しい階段。

ブラスキ宮殿の階段 天井
ブラスキ宮殿では、モノクロの写真展を開催中で、
マリオ・ジャコメッリ Mario Giacomelli の展示が見られました。
日本でも人気のある写真家ですね。
ブラスキ宮殿で大好きな間。
歌劇を愛したローマ教皇クレメンス9世の孫の肖像(?)、詳細不明です。
同じ顔の男の子が、様々な衣装のコスプレでポーズをとった、
注文主の(愚かなほどの)愛いっぱいの作品群で、
この部屋にいると胸がキュンとします。
パオロ・ソレンティーノ監督作品、映画「La Grande Bellezza」でも
ほんの一瞬、この部屋が暗闇に登場します。
あの場面はローマを知り尽くした、美しい使い方と感じました。

Principessa Elisabetta Brancaccio con i figli nel giardino
サルヴァトーレ・ブランカッチョのお妃の、
メアリー・エリザベートと、こども達の肖像の間。
この作品も胸がしめつけられるような、懐かしい印象があります。
描かれた植物から5月頃の風景と判りますね。

足元のアカンサスの花。ローマでは初夏に咲く花で、アカンサス自体がローマの繁栄を象徴する植物。
この作品のモデルになったブランカッチョ家は古い家柄で、
現在の 国立オリエント博物館 は、元 ブランカッチョ宮殿だったそうです
Museo Nazionale d’Arte Orientale (Palazzo Brancaccio) 。
こちらは、ローマ博物館 ブラスキ宮殿からの素晴らしい眺め。

ブラスキ宮殿からナヴォーナ広場を望む。左手は、ボッロミーニ設計のサンタンニェーゼ・イン・アゴーネ教会。中央のオベリスクのある噴水はベルニーニ工房の四大河の噴水。
ブラスキ宮殿の1階のBioのカフェテリア でひと休み。
Vivi Bistrot というおしゃれなお店です。ビーガンも可。
賑やかな観光地に面しているのに、
博物館内のビストロだからか、ゆったりと落ち着いていました。

Vivi Bistrotの店内。
ここでは嬉しいことに胚芽パンの サンドウィッチがあって、
アルファルファとグリル野菜、パプリカの効いた豆腐のペーストの
Verdure grigliate e pesto rosso di tofu を注文。
鎌倉の生活と変わらない豆や野菜中心の食事がいただけて、
絵の制作のための体調も整えられ嬉しいです。

胚芽パンと豆腐のサンドウィッチを注文。

席からナヴォーナ広場が見えます。
Vivi Bistrot はカフェのメニューも豊富で、バールもあり、
お店のスタッフも親切で気に入りました。
このお店はローマ郊外のヴィッラ・パンフィーリ公園にもあり、
気持ち良さそうな空間なので、いつかスケッチのついでに行ってみたいです。
ナヴォーナ広場からヴェネツィア広場近くまでバスで移動。
カンピドリオの丘 Campidoglioを超えて、
フォロ・ロマーノとパラティーノの丘でスケッチの続きです。

カンピドリオの丘の坂道からのお気に入りの風景。様々な様式の建造物が面白く、ローマの松も個性的です。

アカンサスの群生のスポットが、ちょうど日陰になる時間帯です。スケッチにぴったり。
アカンサスを描く間、人間観察も楽しみました。
道端でロマ族(ジプシー)の高齢の女性が
名演技でブルブル震えながら、観光客にコインを乞う様子が見えました。
ヨーロッパの方は事情を知っていて無視ですが、
アメリカ人(アメリカ英語の方)は哀れみ、心配して話しかけ、
コインを恵んでいる方が多かったです。
結局は騙されているのだけれど、
お人好しと言うか、アメリカ人の気質(正義感?)が感じられました。
道でスケッチしている 私のような者にも、
「素晴らしい才能ですね!」「リアルで信じられない、素敵!」と
賛美の声をかけてくださるのは、アメリカの方々でした。
ちょっと、気分的にくすぐったい感じもしましたが、
人として朗らかでいいな、と思います。
さて、例のロマ族の高齢の女性は、
アメリカ人のツアー客で短時間高収入だったのでしょうか(笑)、
早めに帰る支度をしていました。
私の前を通った時に、本当に彼女がおばあさんかも疑わしく、
黒いマントのような粗末な服でしたが、
通りすがりにフワーッと石鹸の香りがしましたもの。。。

生命力あるアカンサスの葉や花は、コリント式柱頭をはじめ、様々な意匠に用いられている。ローマで描かないわけにはいかない植物。
パラティーノの丘で水彩画のラフの仕上げ。

2日目に描いたパラティーノの丘の水彩画ラフの続き、仕上げ。
この日は、日没まで描きました。
美術&絵画どっぷりの一日でした。