心の風景・ボルジア階段
旅の九日目、旅の最終日。
スター ジャスミンの香りいっぱいの季節。
実は夜から朝まで一睡もしないで、ローマでしか描けないモティーフの絵の仕上げをしました。
さらっと描いているように見えるスケッチ、実は時間がかかります。。。
眠いけれど、飛行機の中でゆっくりできますから大丈夫!
チェックアウトまで時間があるので、大好きなモンティ周辺を散歩しました。
滞在した修道院の近くのカヴール通り Via Cavour に面して私の心の風景のひとつ、ボルジア階段 Salita dei Borgia があります。
ローマ教皇アレクサンデル6世(ロドリーゴ・ボルジア)の愛人で、チェザーレ・ボルジア Cesare Borgia, duca di Valentino の母でもあるヴァノッツァ Vannozza Catanei の美しいバルコニー Il balcone di Vannozza !(実際は住んでいなかったという説。)
1990年代に私が生活した部屋は、玄関を出ると、この、ルネサンスの陰影を感じさせる美しい階段が見えました。
ボルジア階段のトンネルを抜けた先のオッピオの丘には、サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会 San Pietro in Vincoli があります。
エルサレムとローマの牢獄で聖ぺテロを戒めていた鎖が祀られていて、多くの巡礼者がこの教会を訪れます。
また、この教会は教皇ユリウス2世墓廟のための、ミケランジェロによる「モーゼ」像が収められていることでも知られます。
教会に隣接してローマ サピエンツァ大学の情報通信学科、機械宇宙工学科などの研究施設や図書館があり、その隣にローマ帝国5代皇帝 ネロの黄金宮殿跡 Domus Aurea や公園が続きます。
この丘でスケッチしたり、ここから眺めるコロッセオが大好きです。
実は私はネロの美意識を興味深く感じ、ネロの時代(コロッセオがない)の風景や彼が愛したバラの香りを妄想するのも好きでした。
2014年、アメリカのグリーティングカード メーカーホールマーク Hallmark (日本ホールマーク) の企画で、ステイショナリーの商品開発で原画を担当しました。
その際に、1990年代にローマで描いたボルジア階段のスケッチを元に、旅先からの便りをイメージして、ガラスペンや切手を再構成し、2015年に「トラヴェル メモリーズ Travel Memories」シリーズが販売されました。
このボルジア階段のスケッチを描いた時のこと、今でも鮮明に憶えてます。
ヴァノッツァのバルコニー の窓ガラスの空色と、白と黒の外壁に絡んだ蔦の虹色があまりに美しく、私はレオニーナ通り Via Leoninaへ下る階段の途中に立ち止まり、秋の冷たい風に凍えながらスケッチしていました。
するとトンネルから素敵な紳士が階段を降りてきて、しばらく私が描く姿やスケッチブックを見つめ(ローマでは珍しい行為)、「美しい。もっと強く!強く描きなさい。」と、おっしゃって立ち去りました。
あとから考えると、指導に慣れていらっしゃる雰囲気で、もしかしたらどちらかの先生でいらしたかな〜?と。建築学科や修復研究所などもある界隈です。
当時、私はローマで生活を始めたばかりで、すべてがうまくいかずに落ち込む毎日でしたから、彼の言葉に力や啓示をいただいたような気持ちでした。。。
私の心の風景、ボルジア階段。
さて、そろそろ、現実に戻ってチェックアウトの時間。。。
ローマの軽やかな変化を感じる充実した旅でした。
ちょうどこの旅の前に、
ローマを代表するファッション ブランド フェンディ FENDI が創立90年を記念しリニューアル。
FENDIに日本的なレストランZUMA が併設されたり、おしゃれな日本食のお店も増えて、
日本の感性が受け入れられ、アレンジされる時代になったと実感しました。
さらに、個人的に興味深かったのは、モンティ地区の発展です。
古代を感じさせる素敵な地区なのに、地味、谷間だから暗い、混沌とした街でしたが、
(古代のスラムとスキャンダル民話、スラブ文化へのまなざしの名残りだった?)
この街らしさが研ぎ澄まされ、エキゾチックで洗練された街になりました。
Valentinoの香水のイメージ映像 や、
FendiのためのOliver Astrologo氏の映像 にも、モンティやボルジア階段が登場します。
お世話になった修道院でシスター方に挨拶し、再会を誓いました。
修道院のお部屋は、僭越ながら、清潔で静かで大変過ごしやすかったです。
旅の途中で、嬉しい出会いあり、いつかローマで小さな展覧会を開催する目標を持つこともできました。
旅日記「私のローマ / ジャスミンの花香る頃に」は、これでおしまいです。
とりとめない日記におつきあいくださり、ありがとうございました。
感謝をこめて、パオロ・ソレンティーノ監督のローマのスケッチ風の映像を。
Giorgio Armani – Frames of Life-Films of City Frames
この「私のローマ」という記録は2008年から旧サイトで書き始め、今後も拙い文と写真、スケッチの画像などと共に続けてまいります。
近々、2016年の12月の2週間の滞在日記をアップしますので、またおつきあいくださいませ。
お楽しみに! a presto !