DIARY:私のローマ / オレンジの樹と、鐘の音 その12

ローマ国立博物館(マッシモ宮)

 


 

 

 

雨あがりのある朝、マッシモ宮(ローマ国立博物館) 
Palazzo Massimo alle Terme・Museo Nazionale Romanoへ。

テルミニ駅 Termini と共和国広場 Piazza della Repubblica の中間あたりに位置する国立博物館で、イタリアの国宝級の作品が鑑賞できます。

 

 

博物館の中庭にはオレンジの樹。
この博物館の3階にある美しい壁画の、序章とも言える風景です。

 

 

 

 

 

ローマを訪れる度に鑑賞する、皇帝アウグストゥスのお妃のリウィアの別荘の壁画(フレスコ画)。「リウィアの庭」と私は呼んでいます。

この別荘の遺跡はローマの北部、フラミニア街道沿いで1863年に発掘され、第二次世界大戦中に残念ながら大きな被害があり、現在は部屋ごとマッシモ宮に移築、保存されています。

 

 

避暑のために造られた部屋の壁に、空色と植物の緑色〜どちらも貴重な天然顔料〜を贅沢に用いて実物大の植物や鳥達が博物学的に描かれています。

絵で描くことにより木立は常緑で、果実や花々は瑞々しく、樹々の枝は薫風にそよぎ、小鳥たちが永遠に歌い続けています。
繁栄や勝利を願う施主の思いが伝わってきます。

 

 

 

何度も上描きして、庭の草木が茂る様子を表現している。

スミレに似た花。実際に鉢植えなどを見ながら描いたような自然な表情。

 

 

描写された樹々の中で、私はヨーロッパトウヒ(?)の表現が好きです。
デッサンが素晴らしいのです。

 

 

 

 

トウヒの枝葉の入り組みの表現では、背景は明度を低くし、手前の枝は明度や彩度の高い色で描くことにより、前に飛び出して見えるよう、科学的に描いています。
おそらく実際に樹を観察しながら描いているでしょう。
二千年以上前のこの作家の、光や色彩に関する知見に共感します。

 

 

別の樹の描写。光の方向を整え、光を使った見せ場の描写も丁寧。非常に高度な技術。

 

 

 

 


 

 

マッシモ宮の他の作品も。

 

テヴェレ川の堤防工事で発見された、ファルネジーナ荘 Casa della Farnesina の壁画と天井レリーフ。

 

 

 

顔が私にそっくりなディオニュソス(ぶどう酒の神様)、ローマに来る度に、この作品に挨拶するのが楽しみです。

 

 

 

 

↑ この豊かなモザイク画の大作。
ミレニアム前はテルミニ駅前のディオクレティアヌスの浴場跡 Terme di Diocleziano のミケランジェロの回廊 Chiostro di Michelangelo に無造作な感じで展示されていました。

 

 

1994年のアルバムより。写真を継ぎ足して貼っている。大作のモザイク画は回廊の吹きさらしに埃まみれに展示されていた。

1994年のアルバムより。モザイク画の縁取りも美しい。

 

 

考え事をしたい時に回廊でよく過ごしたので、綺麗に修復を終えてマッシモ宮でお披露目になったこの作品と再会すると胸がキュンとします。
修復家の方々に敬意を。

 

 


 

 

マッシモ宮は彫刻のコレクションも見応えがあります。

 

 

 

ローマのポルトナッチョで出土した、非常に大きな石棺  Sarcofago di Portonaccio 。

 

 

 

ローマ国立博物館はマッシモ宮の他に、ナヴォーナ広場北側のアルテンプス宮 Palazzo Altemps でもコレクションを展示しており、アルテンプス宮にも石棺がありますからどちらもご覧になることをおすすめします。

 

 

アルテンプス宮のグランデ・ルドヴィシの石棺

 

 

マッシモ宮、ハドリアヌス帝から寵愛を受けた アンティノウス Antinous の肖像。
大きなカーリーヘアが目印の彼の肖像は、ローマの至る所に。

 

 

 

 

 

黒い石で作られたアフリカ系の少年の肖像。

 

 

 

 

 

マッシモ宮の中でも、私が好きな彫刻はこちら。

 

 

 

 

ヒプノス Hypnos 、ギリシャ神話に登場する眠りの神。
穏やかな表情の若い青年として描かれ、額の翼が目印です。

鼻が欠けているのに、こんなにも美しい。
深い眠りに誘われるような、夜空の色のような空間を創り出しています。
オリジナルを創った古代の彫刻家はどんな方だったのでしょう。

 

いつか美術館にお許しをいただき、この像を描いてみたいです。。。