MAXXI(イタリア国立21世紀美術館)へ
ローマ滞在の最終日、念願のMAXXI(国立21世紀美術館)へ行くことができました。
今は亡き バクダード出身イギリス人建築家、ザハ・ハディド 氏 Zaha Hadid(1950-2016) が設計した作品で、コンペ自体は1999年に行われ、実際に美術館として開館したのは2010年。
総面積は2万7000平方メートルのローマらしい広い空間です。
地下鉄でフラミーニオ駅 Flaminio まで行き、フラミーニオ広場から出ているトラム(路面電車)に乗りました。ここからまっすぐ数駅です。
トラムの停留所で道順や時刻表を確認していると、いかにもイタリアのおじ様という佇まいの男性に
「お嬢さん、どちらに行かれるのですか?」と尋ねられました。
私はお嬢さん=シニョリーナと言われたことに動揺しながら(シニョリーナは私の年齢の半分くらいの方への敬称)、『MAXXIです。おそらくフラミーニア/ レーニの停留所だと想うのですが。』と話すと、おじ様は、『大丈夫、MAXXIの停留所に着いたら私が教えてあげましょう。』と、優しく声をかけてくださいました。
フラミーニア/ レーニ Flaminia/reni に着くと、おじ様が『お嬢さん、ここですよ。気をつけて。』と、再び、お声をかけてくださり、初めての駅だったので助かりました。
なぜか、周りの乗客の皆さんが拍手してくださいました(笑)。
停留所から数分で美術館に到着。
日本では体験することのできない ザハ・ハディド氏の作品を前に、感激でしばらくうっとり眺めてしまいました。
ハドリアヌス帝の残したパンテオンやヴィッラ・アドリアーナ、ブラマンテのサン・ピエトロ・イン・モントリオ教会のテンピエットなどなど、ローマの数々の建造物に並ぶにふさわしい、知的な空間です。
正直言って、私はローマでは絵画はほどほどで良くて、やっぱり、このローマらしい空色に映える建造物や空間、彫刻が好きなんだと改めて感じました。
チケット売り場に、トラムで一緒だったご家族が並んでいます。
小さい頃からここに来られるなんて幸せ!
美術館のパンフレットは四角ではなく様々な形で、それらを広げ合わせたものが案内板になっていました。
こういうアイディアや、フォントなどを感じるために、私にとっての旅はあるようなもの。。。
館内はブースに分けられ、様々な展示が同時進行中でした。
楽しみにしていた パキスタン系アメリカ&ベルリン在住のアーティスト、シャジア・シカンダー Shahzia Sikander (1969〜)の展示。
2010年東京都現代美術館で開催された(長谷川祐子氏と中沢新一氏の企画)『東京アートミーティング トランフォーメーション』展で紹介されていた作家。
伝統的な細密画を用いた初期のデジタル作品から平面作品まで、じっくり見応えのある展示でした。
ザハ・ハディドによる水平でない床(緩やかな坂のようになっている)の空間に、シャジア・シカンダーによる美しく巨大なデジタル作品。
アートに性別は関係ありませんが、どちらも女性らしいというか、しなやかで包容力もあって、肩の力を抜いて観ることができました。
学芸員の実力も感じました。
先ほど、外から眺めた、せり出した展示空間。
内部はこんな感じでした。浮遊感!
別の階から。借景との構成が美しい。
内と外と、人の気配を感じながら展示をめぐる空間です。
作品が創り出す空間、鑑賞する集中力、そのエネルギーを少し解放してくれる人の気配やつながり。
この美術館を歩いて、そんなことを感じました。
MAXXIではこの時期に「日本住宅建築展」も開催中でした。
The Japanese House: Architecture and Life after 1945
日本の国宝、久隅守景《納涼図屏風》(17世紀・東京国立博物館蔵)のコピーが展示されています。
コピーといえども、大好きな作品とローマで会えるなんて!
この脱力系&幸せな絵画を、ローマの皆さんはどんな風にご覧になるのでしょう。
ひらがなの展示を読む方も。
小津安二郎の作品も流れています。
原節子さんの美しさで会場も華やかに。
なかなか賑わっています。なんだか嬉しい。
建築模型はこどもさん達を惹きつけていましたよ。
これだけの多くの展示物を、複雑な空間に構成した熱意も、鑑賞する方に伝わっていたと思います。
風を感じるような素晴らしい展示でした。
ローマの空の色は現在なのか、いつの時代なのか、わからなくなるような魅力があります。
その空色を映す窓に惹かれ、時々描いてきた私です。
今回訪れたMAXXIでは、少し先の時代の空色を映す窓が見られました。
ローマの滞在はこれでおしまいです。
お読みくださり、ありがとうございました!