DIARY:私のローマ / オレンジの樹と、鐘の音 その6

カピトリーニ美術館へ

 


 

 

 

 

滞在先の修道院で軽い朝食をとった後、ローマの七つの丘の中でも最も神聖なカピトリーノの丘 Capitolino、カンピドッリオ広場 Piazza dei Campidoglio に建つカピトリーニ美術館 Musei Capitolini へ。

私にとって、18回目のカピトリーニ美術館です。

 

 

丘へ向かう階段と、蒼天に染まる神の子ディオスクーロイ像、市庁舎時計台。

 

 

ミケランジェロ設計のカンピドッリオ広場。
畏れながら、ミケランジェロの彫刻も絵画も私は苦手なのですが、建築作品は好きで、このカンピドッリオ広場も好みです。

ローマ劫掠後の荒廃した街や、手つかずの丘を、風や気を生むように設計するミケランジェロの構成力、腕力に唸ります。
広場の中心にはマルクス・アウレリウスの騎馬像(レプリカ)が配置、像の土台もミケランジェロの仕事です。

 

 

カピトリーニ美術館とは、教皇シクストゥス4世が(ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂を建設した教皇)、それまでヴァチカン所蔵だった古代ローマの青銅の作品群を、1471年にローマ市民に返還(寄贈)し、その後、コレクションを一般にも公開した世界最古の美術館。

カピトリーニ美術館の旧館とも言える、
コンセルヴァトーリ宮殿はこの広場ができる前から建っていました。

 

 

新宮からコンセルヴァトーリ宮殿を望む。2016年5月に撮影。

 

 

時計台のある市庁舎に向かって右側のコンセルヴァトーリ宮殿博物館 Museo del Palazo Conservatori から入館し、市庁舎 Palazzo Senatorio(元老院宮殿) タブラリウム Tablarium を経て、左側の新宮 Palazzo Nuovo の順に見学します。

 

 

 

ローマの宝庫とも言える、コンセルヴァトーリ宮殿への階段

ハドリアヌス帝の胸像。

 

 

 

 

コンセルヴァトーリ宮殿の第8室には、「とげぬき」 Spinario の少年の青銅像があります。
原作はヘレニズム期で、日常の何気ない風景を描いたと伝わります。

私は受験勉強でこの像のコピーを何枚もデッサンしました。
像の動き自体はそれほど難しくありませんが、下向きの顔の陰影を追うのに高度なテクニックが必要です。旧友に再会するような、大変親しみある彫像です

 

 

 

 

「とげぬき」の横には青銅のブルータス像があります。

 

 

 

 

第9室は私の大好きな空間。

ローマ建国の祖である双子の兄弟の ロムルスとレムスを育てた「カピトリーノの雌狼」Lupa Capitolina の青銅像が展示されているのです。
乳を飲む双子の兄弟は15世紀に加えられたそうですが、狼の像は紀元前6世紀末のものという説も。

この像はローマのシンボルとして、
サッカーのA.S.Romaのロゴなど様々に展開されています。

 

ローマらしい重厚な空間。

 

 

カンピドッリオ広場にあった、マルクス・アウレリウス帝騎馬像のオリジナルが展示される第16室。

この騎馬像は、キリスト教を公認した
コンスタンティヌス一世と間違われたおかげで、破壊を逃れました。

 

 

 

 

絵画館 Pinacoteca には16〜18世紀の絵画が展示されています。

絵画館だけでも一日過ごせそうな作品群、グエルチーノ、ルーベンス、カラヴァッジョなど、イタリアを代表する画家たちの作品が鑑賞可能です。

 

絵画館から市庁舎のタブラリウムを通り新宮へ。

 

遺跡を見渡せるテラスに残る美しいレリーフ

 

ローマらしい美しいパノラマ。
新宮へは、のぼって来た階段を再び降りて順路を進みます。

 

紀元前の公文書館タブラリウムから、フォロ・ロマーノを望む。セヴェルスの凱旋門と遠景にコロッセオ。

 

 

 

新宮のエレガントな中庭。
ローマの”もの言う像”のひとつでもある、マルフォーリオ Marforio。

 

 

 

 

パオロ・ソレンティーノPaolo Sorrentino 監督の、「la grande bellezza」という映画作品の主役・小説家のジェップが、この像の前に座っているイメージ画像があります。
隠喩的で、皮肉で、なかなか素敵です。

 

私は、この像の前で、若い頃に不思議な体験をしたことがあります。
マルフォーリオの悪戯でしょうか?
戻れるなら、あの瞬間に戻りたい。。。

 

 

 

 

新宮に展示されている代表的な作品「瀕死のガイア人」。
もともとは青銅製のものをローマ時代にコピーしたものだそう。

 

 

 

 

この像を見ると胸が締めつけられ、アルテンプス宮の「自害するガリア人」やマッシモ宮の傷だらけの「座るボクサー」の像などを追想し、生きる厳しさを思い出します。

 

 

 

 

 

「瀕死のガイア人」と同じ部屋には、若きブルータスの首像とアリアス像があります。
これらの像も受験生の時に何枚も描きました。

 

 

 

 

 

 

 

そして、大好きな空間。
「皇帝たちの間」Sala degli Imperatori。

 

 

※画像をクリックするとGoogleでヴァーチャル・ツアーができます。

 

 

中央にはゆったりを座るコンスタンティヌス一世の母、聖ヘレナの像。
キリスト教を公認した息子に続いて自らも改宗し、高齢でゴルゴダにも巡礼するなど、生涯をかけてキリスト教のために尽くしたと伝わります。

 

 

 

 

パオロ・ソレンティーノ監督作品「la grande bellezza」にも「瀕死のガイア人」や聖ヘレナなどが、暗闇の中、蝋燭の光に照らされる演出で描かれます。

 

 

入り口にはカラカラ帝の首像。

 

 

 

聖ヘレナの息子、コンスタンティヌス一世と言えば、美術館入口や、マルクス・アウレリウスの騎馬像のある展示室に頭部の巨像があります。

 

1994年のコンセルヴァトーリ宮殿、コンスタンティヌス一世と一緒に。ミレニアム前のローマの風情が好きでした。

 

 

 

カピトリーニ美術館  Musei Capitolini
公式サイト official site:Musei Capitolini

 

 

カピトリーニ美術館のブックショップで、イタリアの美術史家 コスタンティーノ・ドラツィオ氏 Costantino D’Orazio の著書レオナルド、ラファエッロ、ミケランジェロ、カラヴァッジョの
秘密シリーズのイタリア語版を見つけました。

 

イタリア語版の購入時は2016年12月でしたが、2017年の「カラヴァッジョの秘密」(河出書房新社)翻訳本が出版された際に、東京のイタリア文化会館のご講演に伺い、コスタンティーノ氏と翻訳者の Mayumi さまにサインをいただきました。
嬉しかったです。

 

 

 

 


 

 

 

 

カピトリーニ美術館へ行った日の夜更けに、親友F夫妻と再会し夜の街をそぞろ歩き。

コルソ通り Via del Corso のショッピング・アーケードの ガッレリア・アルベルト・ソルディ Galleria Alberto Sordi (2016年)のクラシックな雰囲気のイルミネーション。

 

 

 

 

Fさんが言うには、聖イグナツィオ・ロヨラ教会 Chiesa di Sant’ Ignazio di Loyola に、どうしてもMariを連れて行きたい、天井画のだまし絵を見せたい、と。
ナターレ(クリスマス)の季節になると、どの教会も深夜まで開放されキリスト降誕の場面を描いたプレゼピオを拝観できるのです。

 

3人で天井画を見上げ、教会を出てパブでアボカド・バーガーを頬張り、また、夜の街を徘徊。
夫妻の優しさに、心から感謝。

 

 

 

実は、聖イグナツィオ・ロヨラ教会には、ほろ苦い思い出があります。
そのことも、またいずれ書きましょう。。。