Mari Mochizuki

DIARY:私のローマ / 長い長い夢 その15

ローマでピノッキオに会う(パラッツォ・デッレ・エスポジツィオーニ)

 


 

 

 

2020年2月のローマ滞在。

1日目の午後はナツィオナーレ通り Via Nazionare にある
パラッツォ・デッレ・エスポジツィオーニ Palazzo delle Esposizioni で開催の
ジム・ダイン(1935~  Jim Dine) の個展 初日へ。

 

 

ジム・ダインはアメリカを代表するポップ・アートの作家で、
ハートをアイコンにした作品シリーズはあまりにも有名です。
ちょうどセント・ヴァレンタインズ・デーがある時期で、
ナツィオナーレ通りのハートのディスプレイとも響きあっていました。

今回の展覧会では、イタリアとゆかりがあるテーマの
” ピノッキオ ” に焦点をあてた彼の作品群を鑑賞できるので、
大変楽しみにしていました。

 

 

 

 

展覧会はジム・ダインの回顧展的な構成と、
現場で創られたフレッシュな新作、インタビュー動画もありました。

 

 


 

 

 

作品から放たれる透明で強いエネルギーに心を打たれる、
代表作の ” レッド・サスペンダーズ  Red Suspenders (1961)”

 

 

 

 

ジム・ダインが幼い頃から身近にあった工具、
そこに美を見出すのは初期からのテーマ。

 

 

 

 

一見、粗野でゴミのようなのに、詩を編むような繊細で清潔な描写。

 

 

 

 

 

楽しみにしていたピノッキオのシリーズでは、
たくさんのピノッキオに会えました。

『少年になり語り始める木(=ピノッキオ)という概念はアートの隠喩である』
ジム・ダインが70歳前後から作り始めたシリーズ。

 

 

 

 

ジム・ダインは1935年生まれのアメリカ人なので、
ピノッキオもディズニーがベースでポップです。

ディズニーのピノッキオは1940年に発表されているので、
彼が幼い頃から身近にあった存在なのだと憶測できますが、
そのモティーフを70歳代になって作品化するのですから、
美術家とは実にミラクルです。

 

 

 

 

壁に書かれたメッセージ。
丁寧な仕事で大変美しく、禅画のようなストイック+おおらかさも。

 

 

 

 

ハプニングやアクションペインティングというスタイルで、
ジム・ダインは、なぜ、美術史にこんなにも足跡を刻めるのでしょうか?
それは彼が歴史、リベラルアーツを理解・意識しているからで、
この展覧会でも彼のその謙虚な佇まいがにじみ出ているように感じました。

作品とは日々の品性の積み重ねであるということを
見せつけられる展覧会でした。

 

 

 


 

 

ジム・ダインの展覧会会場の上階の、
パラッツォ・デッレ・エスポジツィオーニ2階では、
ミラノ出身の写真家
ガブリエーレ・バジリコ(Gabriele Basilico 1944-2013)展 も同時開催中。

 

 

 

 

” METROPOLI ” と題された
都市を撮影した風景写真の展示ですが、油断していました、
こちらの展示もジム・ダイン展に負けない素晴らしい内容でした。
体力的にかなり消耗しましたが丁寧に観られてよかったです。
(写真展を写真に撮るって野暮ったく思えて会場は撮影せず。)

 

バジリコと同じように風景を撮る写真家も多いでしょうが、
一線を画す、レベルが違いました。
イタリアという国の文化の層に圧倒された、心に残る展覧会でした。

 

 

 

 

パラッツォ・デッレ・エスポジツィオーニは、
テルミニ駅近くの共和国広場から続く
庶民的なナツィオナーレ通りにある気軽な展示館で、
季節ごとに様々な展示や催事が企画されています。
1階のブックストアは観光客の方でも楽しめると思います。