DIARY:私のローマ / 長い長い夢 その19

(ヴァレンティーニ宮殿、ドムス・アウレア)

 


 

 

 

 

藤の花の香りがローマにあふれる頃、
私はふたつの地下遺跡を歩きました。

 

ひとつは ヴァレンティーニ宮殿 Palazzo Valentini 。

 

 

 

ヴァレンティーニ宮殿 地下遺跡のエントランス

 

 

ヴェネツィア広場 Piazza Venezia にも近いヴァレンティーニ宮殿は
19世紀からローマの県庁舎として使われているそう。

宮殿の地下遺跡を巡るツアーは、
古代ローマの日常風景を観る1時間半ほどの構成、
トラヤヌスのフォロ Piazza Foro Traiano や
皇帝たちのフォロ Fori Imperiali に隣接する土地なので楽しみでした。

 

 

ツアーの待合室からの素晴らしい景色。

トライアヌス記念柱

宮殿の中庭にある地下遺跡のエントランス。

 

 

撮影禁止のツアーなので画像はエントランスまで。
古代の生活を魅せる透明な床や 映像 が工夫されていて、
ツアー終盤に見た瓦礫に埋もれる巨大な円柱も見事でした。

現在はエントランスが移動して、
クアットロ・ノヴェンブレ通り Via Quattro Novembre に面した
宮殿正面入口からのようです(2021年4月現在休業中)。

真夏でも地下遺跡見学にはカーディガンをお忘れなく。

 

 

 

 

 

 

そして翌日には、ドムス・アウレア Domus Aurea へ。

ドムス・アウレアは、
現在のモンティ地区「オッピオの丘公園 」Parco di Colle Oppio に位置し、
紀元64年のローマ大火後に皇帝ネロが築いた宮殿です。

 

 

 

 

広大な敷地には、森、人工池や川、庭園などがあり、
黄金と宝石で埋め尽くされた宮殿は数百の部屋から構成され、
ネロの巨像が立ち、機械仕掛けの動く天井や、
花びらや香水が散布される仕掛けがあったことがわかっています。

バチカン美術館に展示されているラオコーン像も、
ドムス・アウレアで発掘されました。

 

 

 

 

 

現代では、ネロの夢は地中深く深くに眠っていて、
私たちはヘルメットを被り彼の夢の欠片を探り歩きます。

 

 

2019年4月撮影

 

 

 

ドムス・アウレアが偶然に発見された1480~1490年ごろは、
この遺跡は地中に埋没した状態でした。
1490年代には芸術家達が遺跡内を見学する試みが始まります。

 

地中の洞窟のような宮殿の廃墟には、
四角や円で囲った鮮やかな色彩の壁画装飾や、のびやかで不思議な模様、
ストゥッコ(石の粉末を石灰と水で練った建築材料)装飾が施され、
少しずつ明るみになるドムス・アウレアの作品群に
当時の芸術家達は魅せられ、調査や研究をはじめたようです。

 

 

古の色彩が残る壁画装飾。

遺跡の天井を見上げると、人が遺跡内部に侵入した穴が確認できる。宙づりになり蝋燭の灯りで装飾を観察したのだろうか。

 

 

 

ドムス・アウレアの発見の影響を感じる作品として、私はまず、
ピントゥリッキオ Pinturicchio (1452-1513)の作品を思い出します。

サンタ・マリア・イン・アラチェリ教会 Santa Maria in Aracoeli の
ブファリーニ礼拝堂 Cappella Bufalini の壁画の装飾柱や
同じくローマのポポロ広場にある サンタ・マリア・デル・ポポロ教会の
Basilica di Santa Maria dei Popolo
デッラ・ローヴェレ礼拝堂の「キリスト降誕」を飾る装飾柱です。

 

 

壁画を囲むアーチ型の装飾をつなぐ、黄色地にえんじ色のドムス・アウレア調装飾。

 

 

 

ラファエッロ Raffaello Santi と
彼の弟子達もドムス・アウレアに魅せられました。
バチカン宮殿 枢機卿のための小さな浴室(非公開)、
ラファエッロの回廊(非公開)をドムス・アウレア調に装飾。

 

古い記憶をたどって、
1993年上野の国立西洋美術館「ヴァチカンのルネサンス美術展」で
ドムス・アウレアの様式やストゥッコ(漆喰装飾)研究主任に任じられた
ラファエッロの弟子のウーディネ Giovanni da Udine による
バチカンの回廊のグロテスク様式装飾作品の展示を私は思い出しました。

 

 

ドムス・アウレア天井装飾

ドムス・アウレア壁画装飾

 

 

バチカン美術館カタログ「VATICAN(1993)」ラファエッロの回廊の頁と、
国立西洋美術館カタログ「ヴァチカンのルネサンス美術展 1993」
ウーディネのストゥッコ(漆喰装飾)の頁。

 

 

 

 

ラファエッロの回廊の “地下洞窟風装飾” は”グロテスク”と定義されて
その後、大ブームとなり、宮殿装飾、家具、陶芸など様々な面で展開され
現代にまで影響を与えて続けています。

 

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ヘルメットを被り、皇帝ネロの夢を探す私たちはタイムトラベルへ。

ドムス・アウレア内の一室にはソファーが並び、
VR(ヴァーチャル・リアリティ 仮想現実)のヘッドセットを装着し、
ツアー参加者全員で皇帝ネロの時代へ出発!
宮殿が地中に埋れていた頃や、コロッセオのないローマの風景、
ネロが夢見た美しい宮殿や庭園を体験できました。

 

 

 

ツアーもそろそろ終わり、「八角形の部屋」へ。
パンテオン Pantheon の設計に影響を与えたといわれる空間です。

 

 

 

 

2019年5月、ドムス・アウレアで「秘密の部屋」が発見された事を
修復作業を監督するコロッセオ考古学公園が 発表 しました。
見つかった空間は「スフィンクスの間 Sala di Sfinge」と命名されたそう。

いつか、また、ネロの夢の続きが見られる日が訪れますように。

 

 

 

 

ドムス・アウレア地下遺跡を出ると、
皇帝ネロの愛した薔薇が静かに咲いていました。

 

VRで見た皇帝ネロの人工池の跡地には、
今はコロッセオが建っています。

 

 

 

 

 

つづく